―― 不 在 ――

〜 てんちゃんとけん兄ちゃんの
      はじめてのおるすばん 〜











― 今日は出動が無さそうだな。―
捲簾は周囲の落ち着いた様子にそう思った。
午後からは訓練の予定も無い。どうやらこの先、待機となるようだ。
では、自分も食堂から昼食を持ち出して天蓬と食うか、と食堂に通じる回廊
に差し掛かったとき、突き当たりの壁際に敖潤が居る事に気が付いた。
相変わらず白の軍服を着用し、マントを纏った姿である。
生れ付きの軍神一族の敖潤が身形に構い付けることが、捲簾には不思議
でならなかった。
そぐわないというだけでなく、何だかんだと言っては天蓬にまで衣服を買い
与えて連れ出して行く。それがどうにも気に食わない。
何時ぞや天蓬に、閣下は号を白龍と仰るので、それで白を好まれるのです
と教えられたことがあったのを、ぼんやりと思い出していた。
そんな考え事をしていると、敖潤が親指を立てて廊下を曲がった先を示し、
顎をしゃくって見せた。
合図を送ると、自分は先に立ってどんどん行ってしまう。
仕方無しに捲簾も後に従ったが、結局敖潤は話し掛ける事も無いまま、自分
の部屋に消えてしまった。
「 敖潤閣下 ・・・。」
軽くノックして声を掛けると、「 入れ。」 という応え。
入って後ろ手に戸を閉めると、既に執務机に着いていた敖潤が、前に置か
れた椅子を指して座れ、と命じた。


翌朝、自室の窓辺りの床に陣取った捲簾は、窓から空を眺めていた。
天蓬がよくしている格好だが、捲簾の部屋には凭れるべき本棚も無く、本
を読む習慣も無い。
何も無い床に腰を下ろして煙草を吹かしていたのだが、天蓬の執務室と
違って、裏庭の資材置き場に面している此処からは桜も見えず、仰いでい
る空は殺風景である。
尤も、書架に凭れ桜を見上げていたとしても、天蓬の気持ちが分かるという
ものでもないのだろうが ・・・。
そもそも、どのような内容も一度で覚える天蓬に何故本棚が必要なんだ?
と、余計なことをも考えてみる。
付き合って相当に日が経っている筈だが、未だにあいつの行動は良く分か
らない、と思う。
捲簾は目を瞑って、煙を吐き出した。
敖潤に呼び出されて告げられた命令は、明日から十日間不在になるから、
その間天蓬に付きっ切りで居てやってくれというものであった。
特に、八日目にある四方軍の合同軍議には従者として付き従い、庇い倒せ
と仰せ付かっていた。
四方軍の合同軍議という言葉すら聞いた事が無く、四半期ごとにあるという
その行事に天蓬が参加するのも見た覚えが無かった捲簾は、問い返した。
元来が名誉職以外のトップが出席するもので、他軍は元帥位にある軍人
が出席しているのだが ・・・ と敖潤は答えた。
だが、天蓬が軍議を嫌うのでな、西方軍では私が代わりに列席していたん
だ、と。
驚いて、そんなことが出来るのかと訊き返すと、下に押し付けて逃げること
は出来んが、上が出る分には有無を言わさんさ、と簡単に言ってのける。
随分と慣れてはいたつもりであったが、敖潤のこの甘やかし方には、流石
に開いた口が塞がらなかった。
しかし、その先を聞いた捲簾は、更に呆れ返った。
自分がわざわざ呼ばれた本当の理由が、その不在が天蓬にとっての初め
ての経験になるのを危ぶんで、というものだったからである。
あからさまに嫌な顔をして見せた捲簾に敖潤は照れもせず、真摯な面持ち
で付け加えた。
「 天蓬を此処に戻した時、あれは ・・・ まだ完全に立ち直っているとも言え
ん状態だったんだ。」
敖潤は天蓬が攫われる以前から、かなりの虐待を受けていたと打ち明けた。
それを生来の忍耐強さだけで受け止めて来たのだと。
攫われ殺されかけてみて初めて、それがどういう行為だかを知った天蓬は
同時に人の心の惨さも思い知った。
軍には足を踏み入れることも出来なくなっていたものを、全幅の信頼を寄
せている敖潤だけを頼りに、無茶苦茶に舞い戻って来たのが今の天蓬の
姿である。
それが出来た天蓬は、また、他との付き合いも出来るようになっていた、と
敖潤は言う。
それでも、敖潤がそこに待っていてくれると分かっていてこその行動でも
あるらしく、最初に複数の日程に亘る討伐戦に独りで参加出来た際に、安堵
した敖潤が休暇を取ろうとすると、天蓬はそのまま倒れてしまった。
その時以来、敖潤は自身の休暇に天蓬を連れ歩いていたというのが、事の
真相であった。
「 誘って下さるんです ・・・ とか言っていたのに ・・・。」
驚いた捲簾はそう言った。
「 貴様を心配させたくなかったんだろう。誘ったのも本当だし。」
「 じゃぁ、今回に限って連れて行かないのは何故だ?」
当然の疑問が湧いて出た。
「 地上の戦のために此処を離れる。私は竜王軍の一員として参加するのだ。
まぁ、軍議と重ならなければ、それでもあれを連れて行くことは出来たのだ
ろうが。」
相変わらず、天蓬の戦闘能力への信頼は厚かった。
一時も目を放せない厄介な部下を、竜王軍の戦闘に参加させて平気な所
がこの上司の変わっている点だと言える。
「 普通、そういう闘いに引き摺り出しても構わないと思うほど見込んでいる
のなら、もっと簡単に置いて行ける筈だが?」
「 普通とか一般的には関係無い。天蓬には置いてゆかれるのが、敵の前
に引き出されるより辛いんだ。」
敖潤はそう説明して、再び、庇う気が有るのかどうかと問うた。
捲簾がお断りだと言えば、本気で軍議を放り出す気でいたらしい。
捲簾は引き受け、天蓬を庇うと誓ったが、敖潤はそれでもまだ何かを危ぶ
んでいる様子だった。
「 意味は分かっているのだろうな?私から離れた天蓬は小さな子供と同じ
だと言っているんだぞ?軍議でも多分自分では何も発言出来んし。」
そんなことまで心配していた。
そして最後に、言いにくそうに持ち出した言葉に、捲簾は我が耳を疑った。
「 私の留守中は抱くなよ?」
「 ちょっと待て。」 流石に捲簾が言い返した。
「 留守の間に抱くなだと?逆だろう。居る時だけでも止(や)めてくれと言う
モンだろうが?居ない時こそ見逃せよ!」
しかし、敖潤は乱暴な口応えにも意外に腹を立てもしなかった。
「 まあいい。貴様の品の悪さは兎も角、天蓬を大事にしている点だけは
認めている。あれが嫌がれば貴様は退(ひ)くだろう。
ただ、言っておかないと貴様が、そうなっても 『 まさか 』 と思って強行せん
かと心配でな。だから言っておく。嫌がったら止めてやれ。」
静かに、しかし真剣に発される言葉に捲簾はたじろいだ。
「 あんた、つまり ・・・。怖がると思うのか?」
「 思う。」
敖潤は言下に答えた。


・・・ それが昨日交わされた、敖潤との会話である。
その夜、敖潤は不安を抱きながらも、天蓬を残し、独り地上に降りて行っ
てしまった。
― まさかな。― と、捲簾は思う。
無論、嫌がるものを押し倒してでもという気は無いし、天蓬と居るのは何か
有ろうと無かろうと楽しいとも感じている。
しかし、信じて手出ししなかった時、それが敖潤の杞憂だったら、天蓬は
何と感じるだろうか?却って傷付くのではないのか?
とは言え、もし何時ものように振舞って敖潤の言うように怖がらせていたと
したら、それこそ可哀想だ。
どうしようか ・・・ 思案している間に朝食の時刻が迫って来ていた。
本人の様子を見て ・・・ ということにするしかないだろう、そりゃ。
元々何時までもウジウジしていられる性質ではない男である。
捲簾は煙草を消し潰して立ち上がると、自室を出た。





「 天蓬 ・・・。」
何時ものように呼び掛けながら部屋のドアに手を掛けた。
声を掛けるのとドアを開けるのと入るのが同時という習慣が染み付いてい
た捲簾は思わぬドアの施錠に阻まれて、先走る身体の均衡を失い、ドアに
頭をぶつけそうになった。
「 鍵掛けたのか、天蓬。留守なのか?」
もう一度呼び掛けると内側で気配がしたが、ドアは開かれなかった。
「 捲簾 ・・・。」
おずおずとした声が聞こえた。
「 ああ、俺だ。」
「 何か御用でしょうか?」
「 用って ・・・。朝だから見に来たんだが?ちゃんと起きてりゃ、朝食を届け
てやろうと思ってさ。」
「 今朝は食堂に行こうと思っていますから ・・・。」
戸を開けようともしないでそんな返事を返す。
どうやら、確かめるまでもない。天蓬元帥は絶不調でおられる御様子だ。
「 そうか、偶には良いよな。じゃぁ、早く出て来いよ。待ってるんだから。」
なるたけ普段通りの声で ・・・ と気を付けながら返事をする。
すると、同じように精一杯平静を装った天蓬の声がした。
「 先に行っていて下さい。直ぐ行きますから。」
「 直ぐってどのくらい掛かるんだ?」
「 1・2分です。」
だったら一緒に行けば良いじゃないか、とは思ったが、捲簾は抑えた。
「 ああ。じゃぁ、直ぐに来いよ?」


捲簾は怪しんでいたが、天蓬は自身の言葉通り直ぐにやって来た。
様子は何時もと変わらない。相変わらずだらしない格好をして、寝癖の付
いた髪をそのままにしている。
いや、寝癖は普段に比べて強く、昨夜上手く寝付けず、寝返りばかりを打
ち続けていたことを物語っていた。
それでも天蓬は、入って来るなり出合った部下に自分から朝の挨拶をし、
食堂の係りにも声を掛けた。
「 直ぐにお持ちしますので、席でお待ちを ・・・。」
言われて天蓬は、係りと周囲で並んでいた部下の両方に 「 悪いですね。」
と照れたように微笑んだ。
こういう場面で何時まで経っても照れを見せるところが好まれているのだ
ろう。周囲の態度も好意的である。
混んだ食堂内で、皆から身を退(ひ)くようにして通されながら、天蓬は捲簾
の居た席まで来ると向かい側に座った。
「 そこで良いのか?」
捲簾が窓際に用意された上等のテーブルと椅子に目を遣りながら訊く。
敖潤と天蓬が食堂を訪れた時のために用意されているものなのだが、天蓬
は 「 ええ。」 と頷くと、そのまま御世辞にも綺麗とは言えない一般用の長い
テーブルに着いてしまった。
一瞬顔が曇ったのを見て、捲簾は、しまったと思った。
天蓬は敖潤に付き合うときにだけ、窓辺のテーブルを利用していたので
あった。
― 態々敖潤の不在を思い知らせてしまったか?―
余計なことを言った所為か、それとも元々不調であったためか、折角持っ
て来られた朝食にも食欲は出なかったようで、天蓬は早々と白旗を揚げる
と、添えられていたコーヒーだけを飲み干し、煙草に火を点けていた。
昨日までちゃんと食べさせていたという自信と、先程悪いことを言ったと気
が咎めていたことから、何時ものように怒鳴り付ける気になれなかった捲簾
はそのまま天蓬を見逃した。
食事とも呼べない食事を終えると、天蓬はとっとと自室に戻って行った。
何やかやと要らぬ談笑を交わす気は、今日は無いらしかった。


それでも、その後取り立てて異様な行動を取る訳でもなく、その日は穏や
かに過ぎていった。
寧ろ普段より行動が素早く、動作がてきぱきしているようにさえ思える。
調練の折にも、何時もするように捲簾に寄り添いながら一歩後ろで眺めて
いるのでなく、少し離れた場所に立って検分し、頷いて帰って行った。
本来それで良い筈の所作なのだが、捲簾にはやはり引っ掛かるものが有
った。
二日目に出動命令が出て、地上に降り立った時には、その違和感は更に
募っていた。
下に入ったら入ったで、やはり寄り添おうとしなかったのである。
今度は下士官と同じ位置にいて、ただ下された命令に黙々と従うことしか
しない。
やはりおかしい ・・・ そう感じた捲簾は、戦闘が一段落し、状況確認しよう
として立っていた天蓬に後ろから声を掛けた。
今の天蓬が正常とは呼び難いことを、この時はっきりと思い知らされた。
その際肩に伸ばされた手に、傍目にもはっきり分かるほど跳び上がって
身体を痙攣させた天蓬であったが、振り向いて捲簾を見詰めた目の中に
浮かんでいたのは間違い無く恐怖の色合であった。
「 お前 ・・・。」 視線の異様さに捲簾が唸った。
「 敵と戦うより、味方に声を掛けられる方が恐ろしいのか?」
質問の刺々しさと未だ肩に置かれたままの捲簾の手に、天蓬は息を詰ま
らせ、喘いだ。
「 敵なんて ・・・。ただボクを殺したがっているだけですから。こちらも気に
食わなければ叩きのめすまでのことですし ・・・。」
「 天蓬 ・・・ お前は ・・・。」
捲簾は今更ながらに、余り立ち直っていないらしい天蓬の様子に、溜息を
吐きながら手を離した。
結局、敖潤が正しかったようだ。
天蓬は今でも、独りではやって行けないのである。
捲簾が、独りでも立派に西方軍のトップを務めていると勘違いしていた態度
は、例えその場に居なくとも常に何処か手の届く範囲で敖潤が見守って
くれていると信じていてこそのものであったのだろう。
予言に屈服するようで情けなくはあったが、捲簾は敖潤が言い当てた通り、
怖がっていると分かってまで、自身の感情のためだけに付き纏えるタイプ
ではなかった。
その後は、久し振りに軍服の留め具を上まで留め、肌の露出を余り見せ付
けないようにしながら、適当な距離を取って天蓬の側に居ることにした。
完全に離れてやる訳にも、前線への参加を禁じて天界に置いてゆくことも
出来ない。
それをすれば今度は捲簾の目の届かぬ所で、天蓬が厳つい軍人に取り
囲まれてしまうと恐れた。もし先程のような身体反応を他軍の奴らに見せて
でもしまったら、どうなるかを考えると冷や汗が出る。
そして、そう悟ってから、軍議の件が重く気持ちに圧し掛かって来た。
それで無くとも、年齢不足で元帥位に居ること自体を快く思われていない
上、普段から敖潤に押し付けていた軍議に戻るのだ。ちょっかいを出され
ずに済む道理が無かった。





いよいよ明日に軍議を控えた夜、捲簾は七日振りに天蓬の私室を訪れた。
やはり施錠されていた部屋に呼び掛けると、無理に戸を開けさせ、強引に
中に踏み込んだ。
「 怖かったら、戸を開けておけば良い。」
そう言ったが、天蓬は諦めたように戸を閉め、捲簾に向き合った。
「 一体何の御用なんです?」
「 明日の軍議には俺が付き添う。分かっているんだろうな?」
「 いえ、必要有りません。」
「 必要無いって ・・・ お前、昼間もガチガチに怯えていた癖に。」
捲簾が呆れながら指摘すると、天蓬は顔を上げられぬまま答えた。
「 済みません。自分でも知らなかったんです。本当です。」
申し訳無さそうに言い訳している。
「 何を知らなかったって ・・・?」
「 だから ・・・ こうなるとは思わなかったんです。貴方に怯える日が来ると
は、予想も付きませんでした。ボクはその ・・・。」
そこで暫く言い淀んだがやがて、思い切って打ち明けた。
「 貴方と何とか付き合えていたのも、敖潤閣下が居て下さると思えばこそ
だったなどと。それで ・・・。」
天蓬が認めた内容は既に捲簾の予測していた通りのものであったが、本人
には流石にそれ以上を言葉には出来ず、ただ俯いて悔しそうに唇を噛んで
いる。自分自身でも不本意だったのだろう。
「 あのう ・・・ 殴りたかったら殴っても良いですよ?」
「 だから ・・・ そういう趣味は無いって。」
「 だったら、何をしに ・・・。」
「 明日を乗り切りたいと思ってさ。それで無くとも最強だの何だの言われて
やっかまれている西方軍のお前を、その状態で許す連中じゃない。」
「 大丈夫だと思うんです。襲われようが、何をされようが、人目も有ります
し、殺されはしないでしょう。生きて帰れば、次の軍議にもボクが出席して
も良いし ・・・。仕返しはその時にします。」
あくまで敖潤の帰還を待ち侘びているらしい天蓬に、捲簾は思わず溜息を
吐いた。
「 どうしても、明日は伸されちまう気でいるんだ ・・・。お前、敖潤がいて怒
っていた時に逆らってでも、よく喧嘩していたというのに。」
「 本当ですね。」 あはは ・・・ と頼りない笑い方。
「 止められていても、後で怒鳴られると分かっていても、それでもいざと
なったら、閣下が来て下さるのだと思っていたみたいです。」
そこまで言った時、捲簾がぐいと天蓬を抱き寄せた。
天蓬は顔も上げずに引き寄せられるままにしていたが、目を合わせない
ところを見ると、幾ら何でも今度は殴るだろうと覚悟していたようだ。
「 確かにな。」 しかし、捲簾は穏やかに言った。
「 あいつはそういう男だった。お前が禁じておいた事をしていても庇う。
何がどうなってようとお前の味方だ。 ・・・ でも ・・・・。」
髪の毛に口付けされる感覚があった。
「 俺もそうする ・・・。だから、命令を ・・・・。」
「 命令?」
「 明日は自分に従って、軍議の間傍に控えておれと。」
「 ・・・・・。」
「 他軍の奴だってしているんだ。構うもんか。良いから命令を ・・・。」
「 本当に他軍にもそんな習慣があるのですか?」
「 敖潤がそう言っていた。お前、何故知らないんだ?」
「 あ ・・・。」 天蓬が小さな悲鳴を上げた。
捲簾は引き寄せていた天蓬の髪に指を入れ、ぐしゃりと押さえ付けた。
「 この馬鹿っ!一度も出席していなかったんだろう!」
しかし、捲簾がそれ以上巫山戯(ふざけ)ることは無かった。
相手の答えが無いのを不審に思った捲簾が覗き込んで表情を見ると、
天蓬は顔色を失い、両腕で自分を抱くような格好をしていたのだ。
腕に力が入って、かなり強い調子で自分を締め付けているようだった。
ぎょっとして仔細に見詰めると、小刻みに震えているのが分かる。
何と! ・・・ と思っていると、とうとう天蓬は膝を折って床にへたり込んでし
まった。
「 お前は ・・・。」
唸るように声に出すと、一応頭ではそう振舞いたくはないと思っているのだ
ろう、「 済みません ・・・。」 と辛そうに謝っている。
「 とてもじゃないな。命令が有ろうが無かろうが、他軍の奴がどうしていよ
うが、俺は付き添うことにする。分かったか?」
天蓬も何とか頷いて見せた。
「 明日の朝、迎えに来るから。」
捲簾はそう声を掛けると、早々に部屋から退散した。
今の自分が、天蓬を護れる唯一の存在でありながら、近付くことで天蓬を
怯えさせてもいるのだと思い知らされていた。





翌朝を迎えて、捲簾は予定より早めに天蓬を起こし、無理矢理シャワーを
浴びさせると、軍服に着替えさせた。
「 馬子にも衣装ってな。そうしてると本物の軍人みたいだ。」
「 それ、どういう意味なんです。」
「 気分良く行けば強気になれるってことさ。ほら、座って。」
ソファを指差して座らせ、コーヒーを持たせた。
「 朝から済みませんでした ・・・。」
天蓬が珍しく萎らしいことを言う。
「 いいさ。俺も飲みたかったんだ。」
サーバーごと持ち出して来たコーヒーをもう一つのマグカップに注ぎ、捲簾も
向かいの席に着いた。
二人でゆっくりとコーヒーを飲み終えると、捲簾が立ち上がって天蓬を誘う。
「 そろそろだな。行こうか。」
「 それは、何なんです?」
捲簾の持った書類の束を見て、天蓬が不思議そうに訊いた。
「 資料だ。最近の西方軍のデータ。」
「 要らないって、知っている癖に ・・・。」
「 知ってるけど、質問があった時、これを繰って小声で囁くのが、付き人の
仕事なんだ。これを持っていないと俺が出席出来ない。」
「 ああ ・・・。」 と一応納得したものの、やはり天蓬には元気が無かった。
「 捲簾 ・・・。」
「 ずっと傍に居るから ・・・。」
慰めてやっても天蓬は頼りなさ気に俯いてしまう。
「 会議そのものは大丈夫だと思うんです。ボクその ・・・ 何を聞かれても
大丈夫ですし。ただ ・・・ 今まで出ていなかったので、出たとなると何やか
や理由を付けて、試合に引っ張り出されると思うんです。」
天蓬の武勇伝は他軍においても、ある意味有名ではあったが、全員が一
度に見る訳でないため、誰かが誰かに伝えた際に冗談の一種として受け
取られ、それ以上に信じられることが無いのか、常に確かめたがる者が後
を絶たなかった。
まして、今日のように長く不得手にして、敖潤に任せてきた軍議の席に着け
ば、必ず見せろと言う奴が出るに違いない。
「 望むところじゃないか。見せてやれば良い。」
捲簾は本気でそう思っていた。四方軍のトップ全員にまとめて見せてやれ
ば、悪い噂も少しは静まるだろう。
「 無理ですよ。ボクには出来ません。」
「 剣技だろ?大得意じゃないか。」
「 駄目なんです。その ・・・。」
「 敖潤が見ていないと、剣も振るえんと?」
「 いえ ・・・ つまりその ・・・ 上役っていうか、軍のトップとか ・・・ 駄目なん
です。」
「 お前がその一人だろうに。」
言ってはみたものの、天蓬の顔色は冴えない。
事情が分かっているだけに、軍のトップクラスとは付き合えないという気持
も察せぬではない。
元々、怯えたままだったものを敖潤が徹底して庇いながら此処に戻したの
が、今在る天蓬なのだ。
「 試合を持ち掛けられたら、断る気か?」
捲簾が尋ねると、天蓬は頷いた。
「 やっても勝てません。それどころか、試合にならないかも。」
「 お前は ・・・。」
「 済みません。こんなこと ・・・。」
天蓬は恐縮し切っていた。
確かに、目の前に居る捲簾を頼り切れませんと言っているようなものだが、
そうとばかりも言い切れない点も有るには有った。
一応、相談はしてくれているようだし、出来ればそういう態度を取りたくない
という姿勢も見せる。ただ、身体が付いて来ないでいる様子であった。
以前に騙まし討ちで聞き出した事情を思い出しても、天蓬が敖潤にしか縋り
切れないと感ずるのを咎める気にはなれなかった。
「 いいさ。」 と捲簾は答えた。
「 試合わせられそうになったら、俺が引き取る。」





天蓬の予想通り軍議は難無く進んでいった。
幾つかの質疑が天蓬になされたが、天蓬はそのどれにもそつ無く答えて
いた。
相変わらず数値は丸暗記で、それをランダムアクセスで自在に取り出して
見せることが出来るのだから不自由は無い。
これまでサボっていた分についても、議事録だけは読んでいたらしく、意地
悪く不在の期間に決定された事項を重点的に訊かれたにも関わらず、天蓬
は全く動じなかった。
午前中の予定が恙無く終わった時、捲簾は機嫌好く天蓬に声を掛けた。
「 無事にこなしてるじゃないか。良い調子だ。さ、昼食にしようぜ。」
しかし天蓬は席に座ったまま、動こうとしなかった。
はっとした捲簾が人目を憚りながらそっと指先に触れてみると、指先は異様
に熱く、驚いて覗き込んだ顔も目元が赤く染まっている。
不得手な場面に、とうとう発熱の癖が出てしまったのだろう。
「 馬鹿 ・・・。何をやっているんだ。」
小声で語気だけを強めて詰ると、消え入りそうな声で、
「 済みません。本当に済みません。」 と謝っている。
「 兎に角立てって。建物の外に出ようぜ。一歩出さえすりゃ、俺が昼食を
持って来てやるから。」
天蓬は困ったような顔をしたが、それでも頷くと、よろよろと立ち上がった。
「 支えてやれないが、短い距離だから独りで歩けるよな?」
捲簾は囁き声で話していたが、異変は既に周囲に知れていた。
一人が近付いて来て、捲簾ににやりと笑い掛ける。
「 色々と大変ですな、捲簾大将。」
北方軍の奴か ・・・ と思いながら、「 大変?何が?」 と問い返すと、
「 綺麗な元帥だが、お守りが要ると言うのも考え物ですな。」 とやられた。
周囲の其処此処で笑い声が聞こえる。
捲簾は普段のへらへらした態度を一気にかなぐり捨てると、思い切り相手
を睨め(ねめ)付けた。
階級が下とは言え、上背も有れば面立ちも精悍で、髪と瞳の黒を如何にも
険悪に見せ付けることの出来る捲簾が真摯な表情を見せれば、普段から
軍人に囲まれて生活している相手方をも充分に威圧出来る迫力というもの
があった。
流石に声を立てることは無かったが、相手が一瞬動作を止めて竦んだ所
を見計らって、凄みの掛かった声で 「 天蓬元帥!」 と低く呼び掛けた。
「 出ましょう。此処は空気が悪過ぎます。」
捲簾はまだぼおっとしている天蓬の肩に乱暴に手を掛けると、荒々しく力
を込めてぐいと引く。
周囲の目を恐れて、それ以上に優しい仕草が出来なかった。


建物の裏地には、何処の兵営でもしているように、要らぬ資材が乱雑に積
み上げられていた。
捲簾はその一角に天蓬を連れて来ると、促して座らせた。
付いて来た者は居ないと確認し、ほっとして改めて顔を覗き込んだ時、自分
の間違いに気が付いた。
元々色白の顔を益々真っ白にした天蓬が、引き攣ったように自分を見上げ
ており、あからさまに怯えている。
― しまった!さっきの ・・・。―
相手方に対する威嚇が天蓬にも効いていたのである。
「 俺に怯えてどうするんだ。」 と言ってみたが、逆効果であったようで、その
声にも天蓬は更に身体を硬直させた。
「 で ・・・?食事は取れそうか?」
「 どうせ無理です。それよりも ・・・。離れないで下さい。」
声が震えているのが伝わってくる。それでも、居てくれと言っているのだけが
救いである。
「 分かった。」 捲簾は持ち歩いている酒瓶を取り出した。
「 水分補給だけしておこう。口を開けろよ。それとも自分で持てるか?」
「 昼間からそういうのは、ちょっと ・・・。」
「 いや、こんなこともあろうかと、入れ替えておいた。中身はスポーツドリンク
だから、心配無いって。」
天蓬が薄っすら笑うと、捲簾の手から酒瓶を受け取った。
厚みのある陶器の瓶の重みにやっとといった手付きで口元に運ぶと、それ
でも何とか中身を飲んでいる。
安堵して捲簾も隣に腰を下ろした。
「 ・・・ ったく。俺にまで怯えやがって。・・・質疑に答えているお前を見て、
大丈夫そうだと思っていたのに。」
「 済みません。」 またしても天蓬が謝った。
「 どうしても駄目なんです。ああいう人達が ・・・。」
「 ああ ・・・。お前に取っちゃ、あの程度の内容は、寝言の中でも答えられる
ってことだったんだな。安心は俺の早とちりか。」
「 貴方もこれ ・・・。」
天蓬が酒瓶を返して寄越した。
「 俺は良い。何もせんから。お前はもう少し飲んでおけ。」
そう言った時、捲簾の目が細まり、急に顔付きが険しくなった。
四方軍のお歴々が揃ってこちらに近付いて来るのを認めると、捲簾は立ち
上がって、彼らの視線から天蓬を遮る位置に移動した。
先頭に立っているのは先程の北方軍の総司令官である。
「 全くもって、難儀なことですな。ところで ・・・ 午後からの軍議には然して
重要な懸案も無いようですので、昼休み後のアトラクションとして天蓬元帥
に模範試合を見せて戴きたいのですが、宜しいですかな?」
「 模範試合 ・・・?」
横から、南方軍の総司令官が言葉を添えた。
「 体術の ・・・。天蓬元帥は徒手空拳でも無敵だと伺って居ります。何時も
御自身でお出ましにならない元帥が折角出席していらっしゃるのですから、
我々もこの機会に是非拝見したい。」
捲簾は唖然とした。この様子を見て天蓬を模範試合に引き摺り出そうとし
ていやがるとは!しかも、実情は兎も角、誰の目にも天蓬に不得手に見え
る体術でときた。
「 元帥はお疲れですので、試合なら自分が ・・・。」
捲簾が申し出ると、相手はそれこそ嬉しそうに口端を持ち上げたが、表情
とは裏腹に強い語調で極め付けた。
「 好い加減にしろ、捲簾大将。本来お前はこの軍議には出席も適わん階級
なんだ。慣例で鞄持ちや付き人の列席を許されているだけの存在だという
ことを弁(わきま)えろ。」
後ろに居た男も加勢してくる。
「 西方軍の捲簾大将か。素行の悪さで悪名高いらしいな。何なら我々が
上層部に告発してやろうか?」
「 何だと!」
捲簾が凄んだ。
「 お前の持っている酒瓶、それだけでも立派な軍規違反だが?」
底意地の悪そうな、しかし何処かに楽しんでいるような余韻を残す言葉。
「 待って下さい。それは捲簾の水筒で、中身はスポーツドリンクです。
確かめて頂ければ分かります。」
天蓬が後ろから掛けた声だった。
一人が天蓬の差し出す酒瓶を受け取り、掌に液体を少し零して舐めてみた。
周囲が物問いたげに見詰めると、「 確かに ・・・。」 と頷く。
しかし、その場がそれだけで治まる筈も無い。
「 それから ・・・。」 と天蓬が付け足した。
「 試合にはボクが参ります。」
その言葉に一同は漸く納得し、軽い笑い声が上がった。
「 それはそれは ・・・。」
「 光栄ですな。今日こそは噂に名高い天蓬元帥の体術を拝見出来るので
すから!」
更に後ろの方に居た一人が、声を掛けた。
上背が二メートルにも達そうかという大男で、厚みは有るが良く引き締まった
体躯を持つ若者であった。捲簾と同じような立場で、誰かに従って出席した
副官である様子で、階級章が彼が中将であると示していた。
「 では、試合は昼休み明けということで。場所は会議場から一番近い、南方
軍の調練場で。お相手は私が務めさせて戴きます。」
「 何だと?」 捲簾が熱(いき)り立った。
「 あんたら、今さっき、俺に身分違いだと言ったじゃないか!そいつも中将
だろうに!」
「 口を慎め。天蓬元帥は酔狂で実戦に参加している方だというので、我々も
気を遣って現役の剛の者を選んだんだ。」
「 あんたら、一体どういうつもりで ・・・。」
「 捲簾 ・・・。」
尚も言い募ろうとすると、後ろから肩に手が掛かり、弱々しい声がした。
「 もう、良いですから ・・・。それ以上は言わないで下さい。貴方の経歴に
瑕が付いてしまいます。」
捲簾を後ろに押し遣るようにして、天蓬が前に出た。
「 試合には後で参りますので ・・・。」
捲簾の勢いに顔を顰めていた四方軍の代表者たちは、まるで今のうちだと
言わんばかりに天蓬の言葉に飛び付き、「 では、お待ちして居ります。」
と言い残して、とっとと引き上げて行った。


「 勝算は有るのか?」
取り残されて、元通り二人になると捲簾が覗き込むようにして天蓬に尋ねた。
「 いえ ・・・。でも、試験という訳でなし、ただのアトラクションですから。
一度やり合って、ボクが恥をかけば済むことです。別に何も変わりはしない
でしょう。」
捲簾は呆れて天蓬を見詰めた。
諦めの良さだけが通常の水準を保っているとは。
「 全く自信無し ・・・ か?」
「 責めないで下さい。どうしようもなく駄目なんです。」
念を押されるまでも無い。声が未だに上擦っていた。
「 天蓬 ・・・。」
先程の底意地の悪さを見せ付けられているだけに、天蓬の言うように、ただ
のアトラクションとして、一度負けてやればそれで済むとは到底思えない。
きっと取り返しの付かぬ大怪我でもさせて失脚に追い込んでやろうとして
来るに違いなかった。
だから大柄で如何にも腕自慢といった雰囲気の先程の若者を用意してい
たのだろう、と思う。
長く軍隊生活をして来た天蓬にだって、そのくらいのことは勿論分かって
いる筈である。
それでも、天蓬はあの場で捲簾が暴れて自身の失脚と引き換えに試合の
話を潰してしまうことを望まなかった。
― そう言えば、優しさも普段通りだな。―
捲簾はそう思った。
いざとなったら、今度こそは制止が掛かろうがどうしようが、暴れてやろう
と決心は着けていたが、取敢えず今はただ、そこでもう一度座らせた天蓬
と時間を過ごして待つしか無い。
黙ったまま、打ち捨てられていた酒瓶を拾い上げ、天蓬に差し出すと、天蓬
も黙って受け取ってもう一口飲んだ。





時間が来て、二人は南方軍の調練場に赴いた。
そこには、他の三軍の最高司令官とその従者の役割を果たす、仕官が揃
っているばかりではなく、御丁寧にも何時の間に呼び掛けたものか、少な
からぬ見物人まで集められていた。
勿論見物人は西方軍以外の三軍から集まった兵士たちである。
戸口は今でも開かれており、何方でも御観戦下さいと言わんばかりだ。
「 巫山戯やがって ・・・。」 捲簾が舌打ちした。
「 見世物にする気でいやがる。」
天蓬は答えなかった。真っ直ぐに立っているだけでもやっとの思いだった
のだろう。
しかし、そんな天蓬も二人が入って来たのを認めて早速やって来た他軍の
代表者たちによって情け容赦無く引き離されてしまい、捲簾の手を離れた
後は、見張るように彼らに周囲を取り囲まれて中央の試合場に連れ去られ
てしまった。
やがて、北方軍の指揮官が集まった観衆に簡単な挨拶をすると、天蓬が
押し出されるようにして、試合の場に登場した。
体術の披露ということで、軍服の上着を脱がされていた天蓬は、何時もそ
の下に着込んでいた白のTシャツ姿であり、肩を怒らせた軍服を着込んで
いる時でさえ体格に問題が有るように見えた男が、益々細く脆弱に見えた。
その姿に反対側に立った先程の中将も呆れ顔である。
― 拙いな、敖潤の居ない今、下手をすれば殺されてしまうぞ。―
捲簾は観衆を掻き分けて、出来るだけ前に出ようとした。
そうこうしている内に試合開始が宣言された。
相変わらず天蓬には覇気も何もあったものではない。
ただただ不慣れな試合に引き摺り出され戸惑って、立ち往生してしまって
いた。
この何日間かで、徹底的に自信喪失し、気弱りしている天蓬があんな場所
に立たされている。
それだけでもかなり辛いだろうに、試合など以ての外であった。
それに比べて、相手は普段から力自慢の若者のようで、試合場に立った
時点で既に重心を落とし、身構える体制に入っている。
試合慣れし、自信満々といった様子だ。
― 話にもならねえ!―
そう思った時、相手がいきなり腕を伸ばし、天蓬を捉えると、腰を捻って大き
く投げ飛ばした。
捲簾は息を呑み、吹き飛ばされ叩き付けられた天蓬を目で追った。
有り難い事に、身体が辛うじて反応したのだろう、受身だけは出来ているよ
うで、大怪我をしてはいなさそうだ。
それにしても何という弱さだろう、こんな天蓬を見たのは勿論初めてである。
投げられたショックと言うよりは、気弱りの続きのような頼りない表情を浮か
べて、天蓬は相手を見上げた。
止めて ・・・ とその瞳が語っている。
が、相手にはそんなものが通じる筈も無く、縦(よし)通じたところで、手加減
してくれそうな気配も無かった。
場内では天蓬が何とか立ち上がっていたが、ただ怯えたように相手を見詰
めるばかりで、やはり何もしようとしない。
― 出来ないんだ、あいつ ・・・。―
ああいう人達がとことん苦手と言い、済みませんを言い続けていた天蓬を
思い出す。言葉通り、どうにもならないで居るのだと思った。
立ち上がった天蓬に再び中将の手が掛かり、二度目の投げが加えられた。
またも弾き飛ばされた天蓬が、捲簾に近い側の場外に叩き付けられ、震え
る腕を支えに漸く半身を持ち上げた時、かなり前まで進んで来ていた捲簾
の方に顔を向けていたが、捲簾を認識してはいない様子だった。
それでも、ゆっくりと口が動き、関係の無いものには捉えられないだろうが、
捲簾にははっきりと分かる言葉で、「 捲簾 ・・・。」 と呟いた。
辛うじて聞こえるか聞こえないかの息の音でしかなかったが、それは捲簾
の理性の箍を吹き飛ばすには、充分な呟きであった。
形振り構っている場合では無くなった捲簾は、獣が吼えるような呻き声を
上げ、驚いた周囲の見物人が身体を退(ひ)いた隙に前に出ようとした。
乗り込んで、何と咎められようが暴れてやろうと思っていた。
そこへ、後ろから何本もの手が伸びてきて捲簾の身体を押さえ付けた。
捲簾を警戒した試合の主催者たちが、最初から付けておいた見張りの者
たちであった。
「 馬鹿野郎!放せ!放さんかっ!」
捲簾は喚いた。
試合場の天蓬はそれにも気付いていない。膝を着いて立ち上がったところ
をもう一度捉えられ、今度は打ち込みを食らって絶望的な表情をしている。
「 何てことをするんだっ!」
身をもがいて見張りを振り払おうとしても、多勢に無勢で身動きが取れず、
引き摺られるようにして試合場の中心に引き戻される天蓬を目の当たりに
していながら、精一杯に差し伸ばす己が腕は遠く及ばなかった。


為す術も無く、虚しく喚いたその時、捲簾の背後から一つの声が掛かった。
かなり後ろの方 ・・・ 恐らくは調練場に入ったばかりと思われる位置から
発されたその声は、それでも良く透り、会場全体に響き渡った。
雷を思わせる大音量は、怒気を含んで、「 天蓬っ!!」 と叱り付けた。
聞き慣れた敖潤の声だと思われた。
天蓬がはっと顔を上げ、声の方に目を遣るが、求める姿は何処にも無い。
幻聴か?と戸惑っていると、再び同じ大声が飛んで来た。
「 巫山戯(ふざけ)るのも大概にしろっ!今直ぐ真面目に闘わんと、西方軍
から追放してやるぞっ!」
捲簾からもその声の主と思われる敖潤の姿は見えなかったが、場内に視線
を戻すと、天蓬の表情が瞬く間に変わって行くのがはっきりと認められた。
先ず最初に瞳に輝きが戻ったと思った瞬間、天蓬は自分に向かって打ち
込まれて来る相手の拳をぱっと掴んで止めると、それを支点に、身体を捻
りながら捉えていた相手を突き放した。
そのまま、既に取り戻していた素早い動きで移動してしまい、あっという間
に、相手との間に程良い距離を取って向かい合っていた。
急な変わり様に戸惑う中将に、天蓬が口角を上げてにやりと笑った。
先程まで怯えだけを伝えていた視線が、今や中将の動きを読んでいると
傍目にも分かる程に変化していた。
抜け目無さそうなその視線にたじろいで、中将が思わず躊躇った僅かな隙
を天蓬は見逃さなかった。
捉えることも適わぬと評されるその動きで瞬時に中将に迫ると、中将が何の
対抗策も取れぬうちに完全に無防備になった鳩尾を突き、その程度では
崩れ落ちるという程のダメージを負わぬ大男の体制が乱れている間に今度
は腕を捉えて、自身の肩を使って大きな投げを仕掛けていた。
二メートル近いと思われる長身に、それに見合った体躯を持つがっちりと
した若者が弧を描いて飛んでゆくという奇跡のような場面に、見物人たちは
ただ圧倒されて目を見開いていた。


結局、中将はそのまま気を失ってしまい、二度と起き上がることは無かった。
天蓬が勝ちを決めた時点で、捲簾を取り押さえていた兵士たちも逃げ去っ
ていた。
自由になった捲簾は最初に先程声のした場所を探しに行った。
天蓬なら放っておいてもそちらにやって来るに違いないと思ったからだが、
その場所に、敖潤は居なかった。
代わりに、海を思わせる鮮やかな青い着物を着た竜神族の青年が立って
おり、黒を多用する軍人たちの中に在って、妙な目立ち方をしている。
「 あんたは ・・・?」
捲簾が尋ねようとした。
「 先程前の方で騒いでいた奴だな。」 答える代わりに竜神の青年は問い
掛けて来た。
「 ひょっとして、お前が西方軍の馬鹿大将か?」
馬鹿大将という言葉に、何と無く青年の正体が分かった気がした。
「 敖潤の関係者か。」
「 自軍の責任者を呼び捨てるのか。成る程、潤の言う通り大馬鹿野郎だ。」
むっとしている所へ、退場を許された天蓬がやって来て、やはり青年を見て
驚いていたが、こちらの驚きはそれが敖潤ではなかったというだけのようだ。
人物は見知っていたらしい。直ぐに気を取り直した天蓬は近付いて行くと、
嬉しそうに前に立って 「 殿下 ・・・。」 と呼び掛けた。
青年の方も急に相好を崩すと、天蓬を引き寄せて抱き締めてしまった。
呆気に取られている捲簾に、抱かれたまま顔だけを振り向けた天蓬が、やっ
とその人物を紹介する気になったらしく、「 捲簾、敖廣様です。」 と教えた。
「 ・・・ ってことは ・・・。」
「 閣下の兄君です。ボクも勘違いしていたのですが。」
「 態とに間違わせたのだ。」 竜神一族の長兄は宥めるように言った。
「 普段の喋り方は違うが、声の本質は似ているらしくて、わたしにも潤と
そっくりな怒鳴り方が出来るのでな。効いたろう?」
天蓬が頷いた。
「 しかし、どうして ・・・。」
「 一時的に天界軍に物資を借りることになって、私が依頼に立ち寄った。
その話が出た時、潤が行ったついでに天蓬を見て来てくれと頼むものだか
ら、覗いてみたら案の定、胡散臭い事態になっていた。」
「 申し訳有りません ・・・。」
天蓬が頬を染めた。
「 構わんさ。ちゃんと勝てたんだし。いや、見事なものだったぞ。タッパの
ある相手だったのに、あんなに軽々と吹き飛ばして ・・・。」
「 いえ、あれは ・・・。相手も何とかしようとして、ボクに力を掛けかけていた
のです。体術では、ボクに出来るのは、相手の力を利用することだけです。」
「 ことだけ ・・・ って、それで充分だろうに。」
敖廣はそう言って愉快そうに笑った。
「 あんた、何時まで天蓬を抱いている気だ。」
ついに業を煮やした捲簾が割って入る。
「 何を怒っているんだ。兄弟で抱き合うのに、何を憚る必要が有る?」
「 兄弟って ・・・。」
「 潤が弟と認めれば、自動的に私の弟でもある。知らなかったのか?」
「 あんたらって ・・・。」
捲簾は唸り声を上げた。


敖廣はその後直ぐに引き上げてしまい、天蓬は再び気の染まぬ軍議の席
に戻って行ったが、先程大男を劇的に放り投げて見せたばかりとあって、
それ以上虐められるということは無かった。
ただ、天蓬の元気は続かず、敖廣が去った後は元通りに塞ぎ込んでいた
のだが、今度は周囲が天蓬を恐れていて、気付かれずに済んでいた。
敖廣が機転を利かせて、試合最初の弱かった天蓬を自らの意志で巫山戯
て闘わずにいたことにしてくれたお陰で、却って周りに気味悪がられ、恐れ
られていたのである。
皆が勘違いしている内にと捲簾は軍議が済むと、逃げるように天蓬を連れ
出して会場を離れた。





夜になって捲簾が夕食を持って天蓬の部屋を訪れた時には、天蓬は軍服
を脱ぎもしないで、ソファに沈み込み、ぐったりしていた。
近付いて覗き込むと、疲れが出たらしく眠り込んでいる。
そっと額に手を当ててみると、まだ熱が引いてはいないのが分かった。
捲簾は食事を脇に置き、天蓬の上着を脱がせて、代わりに毛布を掛け、
寝顔を確かめると、一緒に持って来た解熱剤をコップにぶちまけて掻き混
ぜた。
今掛けてやった毛布の襟元にタオルを敷き、首を持ち上げてコップに口を
付けさせると、耳元に低く 「 飲め 」 と囁く。
天蓬が無意識に水を口に含んだ。
「 良く出来ました ・・・。」
その時後ろで人の気配がし、捲簾は思わず身構えたが、振り返ってみると
正体は戸口に立ってこちらを眺めている敖潤であった。
「 あんたか。何時からそこに居た。」
「 良く出来ました、の少し前から。」
敖潤はそう答えた。
「 戻って来たのか、それとも ・・・。」
「 戻って来た。戦功を認められたのと、兄上の取り成しがあったのとで、
二日早く御役御免になった。どの道、もう勝敗は着いていたし。」
「 そうか。」
捲簾が突き放したように相槌を打つ。
「 厄介だったろう?」
敖潤が人の悪そうな笑いを浮かべながら問い掛けた。
「 ああ ・・・。」
「 予想以上だったろ?」
「 ああ。」
「 だのに、これまで以上に離れ難くなっている。そうだな?」
「 そうだ。経験済みなんだろうに、一々訊くなよ。」
ふん、と息で返事をすると、敖潤は中まで入って来て、ソファの向かいの
席に腰を下ろし、座るなり大きな溜息を吐いた。
「 起こさないのか?戻って来たのを知らせてやらんと。」
「 折角眠ったんだ。そっとしておくさ。それより、貴様な ・・・。」
敖潤が捲簾を睨み付けた。
「 今度のことで天蓬を責めるんじゃないぞ。天蓬は ・・・ したくてそうして
いる訳ではない。」
事情は充分に心得ている上、今回の件では気弱りしていた天蓬から、事
ある度に矢鱈に謝られてもいる。それ以上に責める気など最初から無かっ
た。
「 責める気など無いさ。」
その後、二人で黙って眺めていると、天蓬の頬を涙が伝って落ちた。
表情も些か苦しげだ。
「 起こした方が良さそうだ。やはり辛いままなんだろう。魘されている。」
「 今起こすと、その夢が鮮明に記憶に残るから止した方が良い。
それより・・・。」
言いながら敖潤は腰を浮かせて、天蓬の毛布を払い除け、シャツを捲くり
上げた。
「 やはりな。」
捲簾も見てぎょっとした程にあちこちに色濃く痣が浮き出ていた。
「 相手が大男だったと聞いていたし、天蓬は辛うじて咄嗟に受身出来ただ
けだったそうだから、こんなことだろうと思った。」
「 ここまで酷く傷付けられていたとは ・・・。」
「 全く、肉体に加えられる苦痛には辛抱強いというか、命令違反も甚だしい
というか ・・・。」
敖潤が立ち上がって、天蓬にもう一度毛布を掛け、そのまま背中の下に
手を入れてそっと抱え上げた。
「 おいおい ・・・。眠っている間に営倉行きかよ?」
「 静かな環境で休ませたいだけだ。貴様だけは実情を知っているだろうに。」
捲簾は顔を顰めたが、この一週間の天蓬の経験を考えると逆らえもせず、
先に立ってドアを開けてやった。
敖潤は毛布ごと抱え上げた天蓬を抱いてそのまま出て行ってしまった。





翌日の深夜、捲簾は営倉の天蓬を見舞っていた。
満身創痍の癖に、どうせ寝込みたくないとか何とか言い立てたに違いない。
またしても寝台に繋ぎ止められている。
そう言えば、試合の後、一言も怪我をしたと言わなかったな、と思い出しも
し、敖潤が戻ってくるなり状況判断だけで身体を調べた事にも思いが及ん
だ。あの二人はきっと、どちらもが気性を変えぬまま、ずっとこんな関係を
続けてきたのだろう。
他ならぬ捲簾の目から見ても、天蓬には敖潤が是非とも必要に見えた。
しかしまあ、今回は見た目には派手な紫の痣を身体中に作っていても、
その辺りは怪我慣れしている天蓬である。
敖潤の帰還に安堵していたこともあり、存外元気そうな様子を見せていた
が、禁煙初日にして早くもニコチンの禁断症状を訴え始めていた。
捲簾を認めたとき、一瞬にこっとしたが、直ぐに不安気に 「 また錠前を
抉じ開けたのですか?」 と尋ねて寄越し、「 違う。今回は子守役の褒美だ
と言って、敖潤が特別に入れてくれた。」 と答えると、安心したように、早速
煙草を強請(ねだ)った。
身体の拘束を案じた敖潤が、すぐ隣の部屋で捲簾を見張っていることを
天蓬は知らないでいる。
「 お前は ・・・。」
捲簾は大袈裟に呆れて見せ、枕元にあったチョコレートを一つ摘まんで、
天蓬の口に押し込んだ。
「 折角用意してあるんだ。それでも食ってろ。」
「 酷いですね ・・・。」
と文句を言った天蓬だったが、煙草の件も文句も虚勢でしかなかったよう
で、直ぐに目を潤ませ、顔を背けてしまった。
「 捲簾 ・・・。今度のことでは本当に ・・・。」
「 済みませんでした ・・・ だろ?それ、もう聞き飽きたから良い。」
「 迷惑を掛けてしまって。自分でも、あれではもう ・・・ 情け無くて ・・・。」
「 気にするな。ま、確かに良くはなかったが、20点ってところだ。」
その言葉に天蓬が顔を振り向かせ、怪訝そうに捲簾を見上げた。
「 0点じゃないんですね。何故?試合に勝ったからですか?」
「 あんなものがお前の勝ち試合なものか。普段なら2・3秒で片付けていた
相手だろうに。」
「 じゃぁ一体 ・・・。」
天蓬が降参という顔をした。
「 もう駄目って時に、俺の名を呼んだろう?20点はそれに対してだ。」
「 あはは ・・・。」
何時もの脱力気味の笑いが返された。
敖潤が帰還して恐怖心が消え去ると、この一週間、自身が演じた醜態だけ
が思い出され、流石に堪(こた)えていた天蓬であったが、その醜態の大半
を見せ付けてしまった捲簾に許されたことで、救われた思いがしていた。
もう少し綺麗に微笑み掛け、ましな台詞も吐いてみたかったが、怪我をし、
営倉に閉じ込められている今の状況では、余り格好の好い事も言えない。
捲簾も、やっと何時もの調子を取り戻したらしい天蓬の様子にほっとした。
お巫山戯にも等しい態度でありながら、そんな種類の笑いを返している最中
にさえ姿の美しさだけは満点な奴だ、と改めて思う。
しかし眺めている内に、捲簾はふと、長く引っ掛かっていた質問を今してみ
たいと思い立ち、やがてそれが抑え切れなくなっていった。
捲簾はとうとう訊いてみることにした。
「 なぁ、天蓬。もしも今、俺と敖潤が溺れていて、お前にどちらか一人助け
られるとしたら、お前どっちの手を取るんだ?」
惨い言い方であり、隣に敖潤がいることを考えれば、場合によっては、罠を
仕掛けているような質問でもあるが、捲簾にそこまでの意図は無かった。
何故か天蓬の場合、正直に答えても高が知れているという予感がある。
それでも、訊かずに置けないものを感じ、また、訊けば多少は自分のこと
を改めて考えてくれるかという期待もあった。
だが、天蓬は何も考えようとせずに驚くほど即座に返事を返した。
「 捲簾、貴方を助けると思います。」
嬉しい答えなのだが、その後が戴けなかった。
「 敖潤閣下は水神でもあられるんです ・・・。」
捲簾は相変わらず間抜けな受け答えしか出来ない相棒に頭を掻いた。
「 じゃぁ、空中でどちらか一人助けられ、後の一人が墜落するとしたら?」
「 やはり貴方を。閣下は変化(へんげ)されれば空も ・・・。」
「 もういい!」 捲簾は遮った。
「 身体能力のことではなく、どちらか助けた方が生き、見捨てた方が死ぬ
としたら、どちらの手を取るかと訊きたかったんだ。」
「 その場合には、間違い無く敖潤閣下を。」
言い方を変え、より辛辣になった質問に対しても、天蓬は瞬きすらせずに、
真っ直ぐに捲簾を見据えて答えた。
「 ボクは既に何度も閣下にそういう助け方をされて、今此処に生きています。
一度でも返せるチャンスが有るものなら、迷わずそうする筈です。
どの道、閣下がいらっしゃらなければ、貴方と残されたところで、ボクは
生きては行けませんし。」
捲簾は頷いた。予測の付いていた返答ではあったし、その内容は兎も角、
天蓬のそういう律儀さを気に入ってもいた。
それでも、拭い切れない苦味に渋い顔をしていると、天蓬が
「 それから ・・・。」 と付け加えた。
「 閣下の無事が確かめられたら、戻って来て、貴方の所にゆくでしょう。」
「 だからさぁ、一人しか助けられない場合って話だってば!」
「 ボクもその仮定の上で話していますが ・・・?」
「 へ?」
捲簾は意味が分からず、ぽかんとした。
「 助けられなくても、一緒に死ぬことなら出来るんでしょう?」
「 そうか。」
捲簾は呟いた。
そういうことか。お前らしいな、天蓬。
思わず手が伸びて、自由に出来ずにいる天蓬の髪の毛を梳いてやった。
天蓬は暫く気持ち良さそうに目を細めていたが、急に目を見開くと、にやっ
と笑い、「 ですから捲簾 ・・・ 煙草を ・・・。」 と頼んで来た。
「 この馬鹿っ!!」
どうしても真面目になり切れない相棒に捲簾が大声を出した。


声は夜中の営倉に響き渡り、当然に隣の部屋で捲簾を見張り、ついでに
聞くとも無く会話を聞いていた敖潤にも丸聞こえであった。
「 やれやれ ・・・。」
敖潤が首を振った。
天蓬の最後の言葉が照れ隠しだという事は見当が付く。更に捲簾が馬鹿
呼ばわりしているのが本気ではないことも。
そして勿論、その前の天蓬の答えが嘘でも何でも無いことをも、この上官
は充分に承知していた。

























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   ―― 不 在 ――

   2008/03/06
   てんちゃんとけん兄ちゃんのはじめてのお留守番
   written by Nachan

   無断転載・引用は固くお断りします。

   ブログへのリンク
   http://akira1.blog.shinobi.jp/

   素材提供:Heaven's Garden
   http://heaven.vis.ne.jp/










NOTE :

ええっとですね、サブタイトルは、「 てんちゃんとけん兄ちゃんのはじめて
のお留守番 」 てなところです。
相変わらず、べたべたに甘やかされているてんちゃんを描くのが好きで、
それを想像している時が、他所のサイトのオーナーさんがセックスシーン
を思い浮かべている時みたいに、仕合わせなんだと思います。^^

因みに、道教由来の四竜は、上位から順に、東方蒼竜 敖廣 ・ 南方赤竜
敖欽 ・ 西方白竜 敖閏 ・ 北方黒竜 敖順 の四人であり、西遊記はこれを
物語に取り入れていますが、元来神格である四竜の地位を少々低めに
捉えて描いています。
西遊記で三蔵の馬 ( 八戒のジープではなく!) になるのは、敖閏の第三
太子の玉龍。つまり、敖閏の息子です。

父・敖閨が大切にしていた宝玉を、火事を起こして焼いてしまったドジっ子
で、死罪を言い渡され、観世音菩薩によって竜王に取り成してもらいます。
ま、ドジっ子どうこうよりも、わたしには、家宝を息子より大事にする親父の
方に余程問題が有るようにしか見えませんでしたが。
なにせ、この敖閨、自分の息子に死罪を言い渡した挙句、執行待ちの期間
も、逆さ吊りにして拘留していたという因業親父です。 ( ̄_ ̄|||) どよ〜ん

で、最遊記では、四方という概念と結びつけるため、息子ではなく、敖閨
その人をモデルにしたようですが、それで一文字変えて敖潤としているの
かも知れませんね。
敖潤は丁度、敖閨と玉龍を合体させたようなキャラクタです。