―― 寒 月 ――

        後編









  ( 前編からの続き。わざとに 1パラグラフ重複させています。)

しかしその後、討伐戦に出た捲簾は、その 「 まさか 」 が見事に具象化した
ところを見せ付けられる羽目になった。
現場に出た天蓬は捲簾の指揮下に入ったが、命令以外のことは何一つ
愛想を見せず、職責だけを忠実に果たした。
やらせれば何だってこなすのだろうが、とその態度に捲簾は思った。
ここで俺が死ねと命じたら、黙って従い、本当に死んでしまいそうだ。
しかし、それでも感情は見せないのだろう、とも。
捲簾は捨て鉢だった頃の天蓬を思い出して嫌な予感に襲われた。
一連の闘いを終えると、自分からわざわざ捲簾に報告に来て、帰還を許可
して欲しいと願ったが、捲簾が見せたがっていない顔を無理矢理覗き込む
と、少し紅くなっている。
思わず手を伸ばそうとすると、さっと身を引いて睨み付けた。
仕方無く、片付けはお前の仕事では無いと告げ、帰還を許可した。
「 これで、俺の指揮下から離れた訳だが、部下としてなら送って行って良い
か?」
「 必要有りません。送られなくとも独りで戻れます。」
「 そうかな?俺には先程まで先頭を切って走り回って闘っていた奴とは
別人にしか見えないが。」
返答は無かった。天蓬はそれでも付き添いを許さず、顎を引いて姿勢を
正すと、無理矢理に歩調を速めてゲートに向かって行った。
ある意味ストイックな美しさだとは思うが、捲簾はそういう痛々しい姿を好ま
なかった。
何とかしなければなるまい。・・・ だが、どうやって?

上までしっかりと止め具を嵌めた軍服を緩めもせずに、天蓬が兵営の廊下
を歩いてゆく。
まるでまだ戦闘中であるかのような険しい表情に、擦れ違う兵士達が震え
上がった。
以前の天蓬に戻ってしまっている、と誰もが思った。
もう一人、複雑な思いでそれを眺めていたのが敖潤だった。
敖潤は天蓬に歩み寄ると、前に回って行き先を塞ぐようにして呼び止めた。
「 報告は?」
「 後程、捲簾から ・・・。」
天蓬が言い掛けると、力強い硬い腕が伸びて天蓬の詰襟に掛かり、止め具
を外した。
近くに居合わせた者が息を呑んでそれを見詰めている。
首筋を肌蹴させてみると、案の定首筋から肩に掛けて酷い痣になっていた。
「 負傷隠しの復活か?」
天蓬は答えず、ただ目を伏せた。
敖潤はそのまま乱暴に腕を掴むと、引き摺るようにして、何時もの営倉に
連れ去ってしまった。





一足早く戻った天蓬の顛末を、今回の戦闘に参加せず目撃した部下から
聞かされた捲簾は、敖潤に会いに出掛けた。
捲簾が入って来ると、敖潤は途端に不機嫌になる。
「 この、役立たずが。」
ま、予想はしていた言葉である。
「 天蓬を元の状態どころか、元以下に戻してしまいおって。」
「 元以下?」 言われて鸚鵡返しに聞き返した。
「 最早や、私にも堅苦しいだけの表情しか見せない。」
「 あんたにも?」
「 言って置くがな捲簾、私は天蓬に対して、戦闘時以外に身体を庇ったこと
と、休日に連れ出したことくらいしかない。あれが軍師だと思っているから、
作戦に口を挟んだことも無い。仕事絡みの事では何も口出ししてはいない
んだ。わたしは上司として許可を出し、責任を負い、他軍と擦れ合った時に
解決を図るだけに止めていた。」
「 それって、天蓬が嫌がるから?」
「 その通りだ。第一、口出しの必要が無かった。」
「 確かになぁ ・・・。」
捲簾はそう答えた。確かに天蓬の立てる作戦にチェックは要らないだろう。
戦闘についても同様だ。体力の有る方ではない癖に、大胆にやってのけ、
しかも、大胆に冷静が並列しさえする。
その闘い方は誰にも真似出来ぬものだ。
「 俺も心から信頼していたんだが ・・・。」
「 だのに、陸康からの苦情を隠したのか?まさか言っていなかったとはな。」
「 別に天蓬だから言わなかった訳では ・・・。相手が誰でもあんな不愉快な
ことを本人に伝える気は無いが ・・・?」
「 ふーん?」 敖潤は嫌な相槌の打ち方をする。
「 まぁそうなのかも知れんな。お前はその面に似合わず、人に優しい。」
「 人の面をどうこう言っている場合か。俺だけでなくあんたも頼らなくなって
いたとは ・・・。」
それでは今の天蓬は敖潤に出会う前の、何かがあったとされる東方軍時代
と同じだということではないか。
いや、そうとは言い切れないか。天蓬が甘えなくなっても敖潤は構い続ける
だろうし、その場合には自分と違って格上である敖潤は拒まれない。
「 で、今天蓬はどうしているんだ?あんたが連れて行ったと聞かされたが。」
「 何時もと同じだ。営倉にぶち込んでおいた。だが ・・・。」
「 うん ・・・ ?」
「 今までとは違って酷い嫌がりようだった。自分を懲罰房に入れて欲しいと
まで言っていた。あれの性格から言って、それで目一杯私に逆らっている
のだろうとは、私も思ったが。」
「 拒否は出来ない訳か ・・・。もっと酷い所に収監しろというのがあいつの
拒絶か。」
「 らしい。」
それじゃ、既に全面拒否ってことじゃないか、と苦々しく思っていると、
「 だから貴様は役立たずの疫病神だ。」 と止めを刺された。
「 逃げ出してしまうかも知れんな。あれが本気を出したら、鎖も解くし、部屋
の鍵も開ける。」
「 見舞いに行きたいんだが ・・・。」
「 止めておけ。」 と敖潤は言う。
「 今回、厳重に脱走防止しているから、貴様には会いたがらないだろう。」
「 脱走防止?枷以上の?」
「 着ていたものを全部取り上げておいた。下着までな。・・・ 命じたら自分で
差し出して寄越したが、今の貴様には見せんだろう。」
「 あんたには今でも全面的に服従する訳か。」
「 らしいが、危ういな。これまでの天蓬とは目付きも全く違うし。・・・ 貴様は
もう手を出すな。これ以上拗らせるんじゃない。」
捲簾は退散した。

自室の窓辺りに腰掛けて捲簾は煙草を吹かしていた。
あの時の天蓬も、こうやって煙が窓の外に流れてゆくのを眺めていた。
陸康の苦情を耳に入れられなかったことがそれほど悔しかったのだろうか。
それより何より周囲に庇われて、当事者でありながら事件から引き離され
たのがお気に召さなかったのだろう。庇われるのが未だに辛かったのか。
熱を出して自分に凭れ掛かって来た時、その癖が治ったかと思ったのに。
いや ・・・ 治っていたのかも知れないな。確かに一度は立ち直りかけていた
のだろう。
しかし、その治り方そのものが仕事上のプライドを背景に成り立っていた
のかも知れない、捲簾はそう推測していた。
職業的な自信を背景に、私生活の些末を明け渡して寄越したのだろうが、
それが天蓬が捲簾に促されてやっと譲ったギリギリの線であったに違い
無かった。
だから陸康が捩じ込んだ時、敖潤が事務的に当事者を陸康に会わせる事
を避けて、事情を知る筈の自分を呼んだ事には腹を立てず、寧ろそれが
教えられなかった事の方を強く嫌ったのであろう。
天蓬は必要も無く自身の揉め事から遠ざけられたと感じたに違いなかった。
これまでの会話を思い起こしてみても、天蓬に、気分の良くない話だから 、
といった種類の感情論は通じなかったように思う。
他人には思い遣りを掛ける事も多かったようだが、こと自身に関しては、惨
かろうが情けなかろうが、事実は事実として認識していたかったようだ。
俺は間違えたか ・・・?
「 俺があいつのやっと寄せた信頼を踏み躙ったのか?」





翌々日の遅くに、次の仕事が入った関係で天蓬は思い掛けない早さで釈放
されて営倉を出た。
仕事も然ることながら、今回の怪我が打ち身だけであったことで、痣が全部
消えるのを待つほどでも無いだろうという、敖潤の判断であった。
天蓬は返された軍服の詰襟を上までしっかり止め具を掛けて着込み、敖潤
の差し出す眼鏡を掛けると、一礼して自室に引き返して行った。
数人の士官が見に来ていたが、誰にも声を掛けない。
その中に捲簾も居たが、それが一番話したくない相手であったろう。
自分に必要以上に深く関わろうとする者は最早誰も許さない ・・・ そんな
気分になっていた。

地形が拙 (まず) いな、と天蓬は考え込んでいた。
山城というのはこれだから ・・・ と思い悩んでいる所にノックの音がした。
「 よろしいでしょうか?」 捲簾の声だった。
「 まだ出来ていません。もう少し後で来て下さい。」 と答えたが、相手は
構わず入って来た。
「 軍服を着たままなのか?首筋の怪我が残っているのか?」
天蓬が行儀良く軍服を着込んでいるのを見て、勝手に推測している。
「 貴方に関係無いでしょう。」
「 明日から自分の指揮下に入る者の体調を訊いて何が悪い。」 と捲簾。
「 痣は残っていますが、痛みはもう有りません。御納得頂けましたか?」
「 天蓬。」 捲簾は改めて呼び掛けた。
「 今までに築いた信頼関係は、たった一つのことで全部消えるのか?」
「 何も築いた覚えは有りません。」
天蓬は冷たく言い放った。
「 何もって ・・・。」
「 何も約束した覚えも無いし、信じるとも言わなかった。そうでしょう?」
「 お前、それで良いのか?」
「 ええ。独りでいるのが好きなんです。」
捲簾があれからすっかり散らかってしまった部屋を眺めて、眉を顰める。
「 掃除だけでもしていこうか?」
「 要りません。」
「 めしも食ってないみたいだ。身体が細くなっている。」
「 余計なお世話です。倒れる前にはちゃんと食べます。」
「 じゃぁなくて、時間が来たら食うものなんだがな、普通。」
天蓬が思い切り怖ろしげな顔をして睨み付けた。
「 とにかく夕食を持って来よう。どうせ行かない気でいたんだろう?俺が
持って来て良いよな?」
「 後で自分で行きます。」
「 本当なんだろうな?後で確かめるぞ。それで行っていなければ、明日の
お前の戦闘参加は無い。」
それまで渋々といった様子で捲簾に付き合って返事をしていた天蓬の表情
が変わり、やっと顔を上げて捲簾を見た。
「 一体何を言い出すんです。」
「 めしも自分で食えないような部下は要らん。それでもお前がそんな奴でも
戦闘に参加して良い、それがここのやり方だと思うのなら、現場もお前が
指揮を取れ。俺はそれで良いし、お前の下に入る。」
捲簾の表情は険しく、冗談や酔狂で言っている様子では無さそうだった。
「 後で行きます。作戦の方ももう少し時間を下さい。」
天蓬が重ねて言うと、捲簾は分かった、と言い残して部屋を出て行った。
捲簾が出て行くと天蓬は机を離れ、窓辺りに寄って、また煙草に火を点け
た。
実の所、作戦は粗方出来上がっている。
今一度の点検を、そう思っていた時に捲簾が入って来たのだった。
来なくとも用が出来ればこちらから行くに決まっているものを見に来られる
のが情けなかった。
一時は仕事上の才能だけは認めてくれているのかと安心していたが、陸康
の件で蚊帳の外に置かれてから、やはり甘えるものではないと思い知った。
一旦甘えてしまえば、自分で出来ることにさえ助けが入る。
見縊られてしまうということなのだろう。
唯でさえ自由にならぬ身体を抱え込んでいるというのに、この上そういう
種類の見下し方をされるのは堪らないと思っていた。
庇う気持ちの何たるかなど、理解の仕様も無い天蓬であった。

更に夜が更けて、捲簾がもう一度部屋を覗くと、天蓬はソファに腰掛けて、
ぼうとしている所だった。入っていっても何も言わない。
一瞬眠っているのかと思ったが、目はしっかり開けられていた。
「 作戦指令書はそこに。読むのは自室でお願いします。」
天蓬が事務的にそう言った。
「 めしは食ったのか。」
「 先程済ませました。それで問題無いでしょう。」
見ると机の隅にトレイが置かれている。
自分で食堂に取りに行き持って来たのだろうが、大半残されていて、どれ
に手を付けたのかも分からぬほどである。
「 進んでいないな。明日の戦闘には不参加ということにしてやろうか?」
脅すようにそう告げてみたが、天蓬はゆっくりと首を横に振った。
「 指令書を読めば分かります。ボクが居なければ、作戦は継続出来ませ
ん。」
「 そういう奴を態とに作ったって事か。」
「 必然です。適任でしたから。」
「 そうか。」 捲簾はただ頷いて、部屋を出て行った。

「 天蓬の独り軍隊の復活だな。」
自室に戻って作戦指令書を読み終えた捲簾は呟いた。
こんなものまでが昔に戻っている。
自分がここに着任する以前の ― 着任しても正す以前の天蓬の戦闘術が
指令書の中で完全復活を遂げていた。
止めさせねば ・・・ と思うものの、作戦自体は良く出来ており、非の打ち所
が無い。
問題は唯一つ、天蓬に掛かるであろう負担の大きさだが、仕事の内容が
難しく他者には任せられそうに無かった。
態とにそう作ってあるような気もする。
確かに誰が見ても良く出来た作戦には見えるのだが、その一人に掛かる
負担ばかりが大きく、それが超人的に働くことを前提に作られていた。
良く出来た作戦とは、本来こういう部分を作らない作戦のことを言うのでは
ないのだろうか?
しかし、現に一人だけとは言え遂行可能な人員は居る訳で、却下出来る
理由も無かった。
敖潤に訴えることも考えてみたが、直ぐに無意味だと思った。
そもそも自分が来るまでこの軍では、それが罷り通っていたということが、
敖潤にも止められなかった事を示していた。
それに、敖潤その人から聞かされてもいる。
作戦にも実行にも口出ししたことが無いと。
敖潤は軍師としての天蓬の意見を自分とは別格の問題として受け容れ続け
て来たのだろう。
だからこそ、天蓬が無条件に懐き、信頼を寄せて来たのかも知れなかった。
しかし、だ。
そんなことまで許し、全ての受け皿になる人物は二人は要らなさそうにも
見える。
寧ろ必要なのはそれを止められる者だろう。
「 俺がやるしかないのだろうな ・・・。」
捲簾は観念して立ち上がった。

「 不承知とは?」
今にも噛み付きそうな勢いで天蓬が反発した。
元々夜中に叩き起こされて機嫌は悪い。それまでの経緯というものもある。
「 やりたければお前が指揮を取って自分でやれ。少なくとも俺にはこういう
命令は出せない。」
「 今回、ボクが軍師として考え得る作戦はこれ一案です。他には有りませ
ん。」
天蓬は言い切った。
「 嫌なら貴方が作戦を立てれば良い。ボクはそれがどんなものでも従い
ますから。」
先程、嫌ならお前が指揮を取れと言われた仕返しでもしているつもりだろう
か、益々無理なことを言って来る。
「 天蓬 ・・・ それは無理だ。俺は作戦に関してお前には全幅の信頼を置い
ている。お前に敵う者は誰もおらんとな。その仕事を引き取る気は無い。」
本音であった。
着任以来、何が東方軍時代と変わったといって、西方軍の作戦指令の良く
出来ていたことほど変わったことは無かった。
当時には分からずにいたのだろうが、それを知ってからは、東方軍に居た
頃の指令は、自分が戦わない奴の気紛れなお遊びだったと思えた程で
あった。
捲簾はそれをそのまま明け透けに天蓬に伝えた。
「 だから、自分で引き取って変える気は無い。お前に変えて欲しいとお願い
しに来ているんだ。」
椅子に腰掛けて聞いていた天蓬が捲簾を見上げている。
「 そうなんですか?」
「 本音だ。今までの俺の言動とも矛盾は無いだろう?」
「 しかし、これ一案しか無いのもボクの本音です。職業的なことに嘘は吐か
ない、自軍の損傷無しに何とかなりそうなのはそれだけです。」
表情を探ってみたが、その通りなのだろう。
「 では、実行者として人選の提案だけしたいんだが ・・・。」
「 良いですよ、どうぞ。」
「 今回その位置以外の仕事は然して難しくないようだ。俺の指揮は永繕に
任せて、俺はお前と行く。」
「 危ないですよ。力仕事と言うより潜入ですから。向いていないのでは?」
「 それが何時力仕事に変わるか分からないから躊躇っているんだろうに。
その時のためにも俺がいた方が良いだろう。」
戸惑ったような表情をして天蓬が顔を見ている。
仕事としては承知するより無いのだろうが、気持ちとしては未だ捲簾と二人
にはなりたくないらしかった。
それでも結局、仕事上の問題に私情を持ち込む様を人に見せたくない気持
の方が勝ったのか、天蓬は抑揚の無い声で 「 分かりました。」 と答えた。
顔にはそれが辛いと書いてあり、捲簾も少々気が咎めたが、普段の彼なら
ともかく、深層で自棄を起こしている気味の有る天蓬を独りにすることが
どうしても出来ない。
「 それは良かった。」 そう言うと捲簾は引き上げて行った。





天蓬の調子は最初から悪そうだった。
捲簾の手伝いを断ったことで、生活全体が壊滅的に打撃を受けている上、
捲簾が来る前に部下が与えていた保護は、新しい上官に対する遠慮から
まだ復活していなかった。
一時的に断ち切られた他者の手助けを、天蓬は自分で補おうとすらしない。
生活や体調の管理が全く出来ないこの欠陥軍師は、たったこれだけの事
で目に見えて弱っている。
尤も、目に見えるのは捲簾を始め少数の側近の者だけで、それ以外の
兵士達には普通に見せている意地っ張り振りが流石と言おうか、最大の
問題点と呼ぶべきなのか ・・・。
更に昨夜は残業し、また捲簾の命令に悩まされて殆ど眠れてもいない。
どうやって背筋を伸ばして歩いているのだか分からないほどに弱っている。
いっそ体調の悪さを指摘して、作戦から外してしまおうかとも考えたが、作戦
自体が天蓬を必要としており、また外して黙って引っ込む天蓬でもなく、
捲簾にはただ傍にいてやることしか出来なかった。

無事戦闘が終り部下達と合流して、仕事の終了を宣言し、労いの言葉を
掛けた後、「 良かったな。」 と天蓬をも振り返ってみると、今の今まで先頭
に立って皆を導いていたはずの天蓬は、何処も見ていない虚ろな目をして
立ち尽くしていた。
はっとして慌てて腕を掴み、「 お前は一足先に帰って、敖潤に報告して
おいてくれ。片付けは俺がやるから。」 と引っ張ると、不思議なことに目が
虚ろなままではあったが普通に歩く。
永繕の方を見ると、彼も一緒に付いて来たので二人をゲートまで送り届け、
「 頼む ・・・。」 と声を掛けた。
ゲートが閉まった瞬間、堪え切れなくなったものか、天蓬は意識を失くし、
支える永繕の腕に崩れ落ちた。





帰還してみると、丁度夕食時間帯の始まりと言った頃合いで、ゲート付近
にも廊下にも人影がなかった。
多少の躊躇いはあったが覚悟を決めると、永繕は天蓬を抱き上げた。
軽い ・・・ 女性ほどではないので、肩を使ってはいるが、とても成人男性の
体重とは思えない。
刀剣は ・・・ と思って覗き見ると、気を失っているはずの天蓬がそれだけは
握り締めたままでいた。
溜息が出たが、ゆっくりとはしておれない。
行き先は ・・・ と永繕は素早く考え、ゲートから一番近い敖潤の部屋に行く
ことに決めた。
どうせあの方には身体のことはバレている。
また負傷隠しで叱られるよりは、距離の点で有利な今こそ頼った方が良い
だろう。
そう考えながら敖潤の執務室を訪ね、入室の許可を受ける間に人目に触れ
るのを嫌って、思い切ってドアを開け中に入った。
この特別待遇の最上官の部屋を訪れるのは初めてであった。
入ってさっとドアを閉めると、恐る恐る奥を見る。
敖潤が無言のまま立ち上がり、こちらに来ようとしている所であった。
「 閣下 ・・・。」
敖潤は永繕をソファに導くと、天蓬の手から刀剣を奪い、傷付けずに下ろ
せるように手伝ってくれた。
「 仕方の無い大馬鹿者だ。」
敖潤が下ろした天蓬の身体を伸ばしながら言った。
頭にクッションを宛がい、眼鏡を外してテーブルに置く。
白磁の様なと噂される面立ちが露わになり、乱れて顔に掛かった髪の毛を
指先で元の位置に返してやると、敖潤は手の甲をそっと頬に押し当てた。
姿勢が楽になった所為か、天蓬が薄っすらと目を開け、敖潤に気付いた。
覗き込んでいる敖潤に、「 申し訳有りません、閣下 ・・・。」 と掠れた声で
謝っている。
「 皆の前でしくじってしまったようです。」
「 誰にも知られてはおりません。大丈夫です。」
永繕が横から言葉を掛けた。
「 ゲートに入るまで、何故か貴方様は御自身で歩いていらっしゃいました。
刀剣もしっかり持たれたままで、です。」
永繕に気付いて呆然とし、次いで起き上がろうとする天蓬を押さえながら
敖潤が振り向いて永繕に言葉を掛けた。
「 御苦労だった。もう下がって良い。後は私がやる。」
他言無用は、告げる必要すら無さそうに見えた。
永繕はただ一礼して部屋を出て行った。
「 ここは ・・・?」 天蓬がぼやけて見える部屋のことを訪ねた。
「 私の執務室だ。心配は要らない。永繕がゲートから一番近いのを良い事
にここに担ぎ込んだのだろう。厳しく接していたつもりだったが、選りにも
選って、上司の私の所へ逃げ込んで来るとはな。お前の躾が余程良かった
のだろう。あいつにはお見通しだったという訳だ。」
「 営倉の中身以外は、何もかもバレていると思います。」
「 その営倉まで歩けそうか?」
「 いえ、もう自分の部屋に戻りたいのですが。」
「 襟首を掴んで引き摺ってゆくと言う方法もあるぞ ・・・?」
天蓬は黙ると目を瞑った。立って歩かなければならないなら眩暈をもう少し
治める必要が有りそうだった。

夜になってから捲簾が敖潤に会いに来た。
天蓬は何処かと真っ先に尋ねる捲簾を睨み付けながら、それでも
「 何時もの営倉だ。」 と教えてやる。
「 医者を呼んだら、少なくとも四・五日は飲まず食わずだったろうという診立て
だった。今、点滴を受けている。」
「 軍医を呼んだのか?あそこへか?そりゃ ・・・ ぶったまげたろうな。」
「 入ったことがあるという口振りだな。まぁいい。・・・ しかしそんな訳は無い
だろう。私の主治医を呼び寄せた。」
「 はぁ ・・・?まぁ、あんたは異界の住人だから ・・・。」
「 そうだ。」 敖潤は捲簾に向き直りながら厳しい声で言った。
「 私は貴様達から言うと異界の住人だ。そして、天蓬ももうそろそろ、その
異界に連れて戻ろうかと考えている。」
「 何だと?」
捲簾が驚いて顔を見る。
「 もう少し好きなようにさせておいてやりたかったが、貴様が下手を打って
ばかりするから、限界のようだ。」
「 そんな ・・・ 可哀想な。あんなに気に入っているのに ・・・。いいか?あれは
何千年に一度の逸材だぞ。それを天職から引き離すなんて ・・・。」
「 心配は要らない。異界に引き取った後は記憶は削除するから。」
平然と口にされた敖潤の残酷な台詞に、捲簾は唖然とした。
「 何を馬鹿な ・・・。あいつから軍籍を奪うだけでなく、その記憶も消すのか!
あれがあいつの本来の姿だというのに!」
「 闘い続けるのが本来だなどという者はおらん。あれも血生臭い環境から
引き離してしまえば、心安らかに暮らすさ。」
「 それじゃ人形だろうよ。綺麗だと愛でられてそれだけなのか?」
「 天蓬は既に承知している。」
「 何でまた ・・・。」
捲簾に信じられる訳も無かった。
「 以前にも一度そうし掛けたことがあったが、思い止まっていた。その時に
あれにその処置のことは話した。あれはそれで良いと言ったが、貴様に未練
があって哀しそうにしていたので、元の立場に返したんだ。だが、今回は
もう何も無さそうだ。あれも意味を分かっていて承知している。」
「 そんな ・・・。」
捲簾が呻き声を上げた。
「 もう少し回復させたら連れて行く。私もここを離れるつもりだ。」
そんな馬鹿な。あの天蓬が軍を離れて全てを忘れて、人形みたいにして
異界で平和に暮らすだと?それじゃ、天蓬元帥の処刑と抹殺じゃないか。
あってはならないことだ ・・・ 絶対に。
「 分かったよ。」 不意に捲簾が重く低い声を出した。
「 良く分かった。俺が軍を離れる。今直ぐ退官願いを書く。そうすれば天蓬
は俺が来る以前の状態に戻れて西方軍のトップに立ち、生き生きして暮ら
せるんだろう?俺が辞めたら、あんた天蓬をここに置いといてくれるんだよ
な?」
敖潤が捲簾の顔を覗き込んだ。
真剣な顔をしており、口元が必死の思いに引き攣っていた。
それでも敖潤はその真剣さを汲んではやらなかった。
「 ま、言葉では何とでも言える。私は上面の言葉は信じない。天蓬だって
そうだ。あれはある意味誰より人の言葉に翻弄されて来た。」
「 今直ぐ書くと言ったろう。それに、天蓬に会わせてくれなくても良い。
書き終えたら今夜の内に出て行く。」
「 貴様に出来るものか。」
「 やるさ。天蓬はどうしても軍に置いておきたいからな。」
そう言うと捲簾は出て行った。





点滴がチューブを降りてくるのを天蓬はじっと眺めていた。
半分ぼやけて、見えてはいなかったが、まぁいい、仕事を離れてしまえば
視力もそう必要ではあるまい。
そう言えば、発熱ももうどうだって良い訳だ。
枷も鎖も掛けられておらず、戸も施錠されては居なかったが、最早天蓬は
起き出そうとも逃げようともせず、大人しく点滴を受け続けていた。
この先敖潤のところに行くとなれば、身体は治っていた方が良いだろう。
思えば無理ばかりを良くぞ通してきたものだ。
「 今度こそ、終わりにしないといけませんよね。」
天蓬が小さく呟いた時、ドアが開いた。
「 天蓬 ・・・。」
入ってきた敖潤が深刻そうな顔をし、ベットの端に腰を下ろしたのに、天蓬
は驚いた。既に決着が着いている話なのに、何故今になってそんな顔を
するのかと訝っていた。
「 捲簾が軍を去るそうだ。」
寝耳に水のその報せに思わず、「 え?」 と声を上げ、起き出そうとして敖潤
に押さえ付けられた。
「 落ち着け。見せたいものがある。」
敖潤の力強い片手で肩を押さえられ、ベットに縫い付けられるようにして
半身を起こした形に固定されていた天蓬は、その状態で捲簾の退官願い
を見せられた。
「 何のためにこんなことを ・・・?」
「 捲簾が、天性の軍人であるお前を天職に留まらせたいそうだ。」
「 そんな ・・・。閣下が留めて下さったのでしょう?」
「 留めなかった。今日中にここから引き上げろと言い渡しておいた。」
天蓬の瞳孔が大きく開いた。唖然とし、息を弾ませている。
「 当然だろう?私としてはこんな風に絶望したお前を連れて帰って、可哀想
な退官のさせ方をするより、捲簾の居なくなった西方軍で嘗てのようにお前
が一人でトップに立ち、縦横無尽に活躍しているのを眺めている方が良い。」
「 いえ、それは ・・・。」
「 良かったではないか。お前もこれでもう怯えなくても良いんだし。」
「 怯えた?自分がでしょうか ・・・?」
背筋を何か冷たいものが走り抜けたような気がした。
「 己が見下されているのではないかとか、捲簾が己を信頼していないの
ではないかとか、身体の弱いことを笑われていないかとか。」
内部にドクン!と大きな鼓動の音を聞く。
「 そんな、自分はただ ・・・。」
天蓬は反論出来ぬことに気付くと、急に怖ろしくなって身体を振るわせた。
全てが己の誤解であったとしたら、それでも退き下がってくれた捲簾は、
一体 ・・・?
暫く小刻みに震えていたが、やがてゆっくりと手を持ち上げ、肩を押さえて
いる敖潤の手に白く細長い指を載せた。
「 閣下 ・・・。お願い致します。どうか ・・・。」
敖潤は眉を片方だけ上げて見せた。
「 私にどうにか出来ることでは無いだろうに。」
「 どうか ・・・。」
同じ事をもう一度言いながら、凹レンズを取り払われて大きく見える瞳に
みるみる涙を滲ませる。
翡翠の瞳が何度か涙を湛えたり零したりを繰り返すのを眺めていた敖潤
は、ややあって自分に掛かった華奢な指をゆっくり外させ、このどうしよう
もない不肖の部下を胸に抱き寄せた。
「 まぁ軍隊などという場所に、涙をぽろぽろ零す軍師がいるというのも面白
いかも知れんな。私ももう暫く今の仕事に着いていたいような気がするし。」
胸の中に顔を埋めるようにして聞いていた天蓬は、その言葉に顔を上向
けて敖潤を見上げた。
「 ・・・・・?」
敖潤はゆっくりと身体から天蓬を引き離すと、点滴のチューブを外し、注入
用の針の上にガーゼを宛がって止めてくれた。
更に元々着ていた軍服を手渡し、「 点滴の続きは受けろよ。用が済んだら
ここに戻って来い。」 と告げる。
「 ですが ・・・。」
「 私にはどうにもしてやれん。行って己が力で留めてくることだ。もう分かっ
たろう?最初の捲簾の行為がお前を見下したものだったかどうか。」
天蓬は頷いた。
「 私のことは良いから、己の思うように解決しろ。」
「 閣下 ・・・?」
天蓬が様子を窺うように敖潤を覗き込む。
「 臆病になるな。以前に言った通りだ。お前が何処で何をしていようが、見
守り続けていてやる、ずっとな。」
「 申し訳有りません。」
「 もうそれは良い。お前の気の済むようにして来い。」
敖潤が服を着せてやり、立つのにも手を貸した。
天蓬は身の竦む思いだったが、何度敖潤の表情を窺っても、ただ穏やかに
見守るような表情しかしていない。
「 一々人の顔色を窺うな。これはそれだけお前が上官として立派に勤めを
果たして来たということなのだろう。」
立ち上がり出て行こうとする天蓬に、敖潤は持っていた退官届けを目の前
で二つに引き裂き、渡してくれた。
「 不受理だと言っておけ。」
「 有難う御座います ・・・。」
「 早く行け。」
敖潤に促されて天蓬は営倉を出た。





営倉を出てから眼鏡を貰ってこなかったことに気付いたが、引き返している
暇は無かった。
一応西方軍の敷地内に居さえすれば、全ての設備の位置は分かっている。
問題は現在己が何処に立っていて、何に向かい合っているかが分からない
ということなのだが、ええい、と天蓬はそのまま走り出した。
休まされ手当てされていたことで身体は一応走れる所まで回復していたが、
視力の足りないのがどうにもならない。
明るいとは言えない夜の兵営を走り抜けようとするうち、途中何度も人に
ぶつかって謝った挙句、ついでに支柱やら何やらにもかなりの回数謝った。
そうこうするうち、どう考えても自分から寄って来てぶつかったとしか思え
ない人物にぶつかった。同時に人影が急に自分の周りを取り囲む。
「 一体 ・・・。」
目を凝らすと、見た事の無い顔が並んでおり、制服も西方軍のものでは
なかった。
「 これは、天蓬元帥。眼鏡をお忘れですか?」
慇懃だが揶揄の入り交ざるその台詞に、相手が東方軍の兵士だと気が付
いた。
しかし、制服に付けられた階級章の少なさから、彼らが下士官だと知れる。
「 何故、行き先を塞ぐんです。」
天蓬は相手を嗜めた。
「 いや、綺麗な女官がお通りかと思って近付いたのですが、違っていたよう
です。」 そういった後、直ぐに語気を荒げて、「 付き合って貰おうか。」 と
顔を近寄せ凄んで来た。
あの時の陸康と同じように、独りで居る天蓬を捕まえさえすれば自由に
出来るものだとでも心得ているに違い無かった。
「 何のためにです?」
片付けなければ先に進めない、と観念した天蓬は身構えながら聞き返した。
当然喧嘩になったが、自分に拳を振り上げて来る者の腕を捉えて、放り
投げることは出来るものの、控えている筈の周囲の者の動きが掴めない。
不安に思いながら闘いを続けていたが、別に何処から不意打ちを食らうと
いうことも無いままに闘いはあっけなく済んでしまった。
「 もっと多かった筈では ・・・?」
不思議に思っていると、側に動く人影があって、それが天蓬に近付いて来た。

やはりまだ居たか、と向き直って身構えようとすると、聞き馴れた穏やかな
声がした。
「 投げるのは勘弁して下さい、天蓬元帥。」
「 捲簾 ・・・?」
「 全く、眼鏡が無いとこれだから ・・・。」
捲簾が言った。
「 捲簾、貴方が手伝ってくれていたのですか?」
「 また怒らせてしまったか?」 捲簾はバツの悪そうな笑みを浮かべた。
「 だがもう怒るな。こんなことはこれで終わりだから。」
「 いえ、そうは行かなくなりました。これ ・・・ 渡しておいてくれと。」
ポケットから破かれた退官願いを取り出して渡す。
「 不受理だそうです。」
捲簾は顔を顰めた。
「 何度でも書くさ。俺はどうしてもお前をここに置いといてやりたいんだ。
お前、前にも敖潤のところに行き掛けたが、そこで何もかも忘れて人形
みたいにして暮らすことになっていたんだそうだな?まさかそこまでとは
思ってもいなかったが、そんなものを承諾するほどに失望するな。」
天蓬の肩に軽く手を置いて、「 お前はここに居ろ。」 そう言って立ち去ろう
とした。
慌てた天蓬が呼び戻して手を捉えた。
「 待って下さい。行かないで。閣下にボクたち両方居ても良いと許可を貰っ
てあるんです。」
振り向いた捲簾は頭を振って、「 それは止めておく。」 と答えた。
「 あんなお前はもう見たくない。俺が居なくなれば、また部下達が以前通り
お前の世話を焼くだろう。その方が良い。」
「 ですから、ボクが間違っていたと。最初から疑ったのが間違いでした。」
「 そうなのか?」
天蓬の言葉の途中から表情の変わった捲簾が、聞き返す。
「 ええ。貴方はボクの能力を高く買ってくれていました。それに自分で気付
けなかったんですが ・・・。」
「 ふーん。」
半信半疑のその答えに、天蓬はもっと何かを言わねば、と気を焦らせる。
「 あの ・・・ ボクが悪かったんですから、条件を付けて貰ったら呑みます。」
「 ほう?」 捲簾がニヤリとした。
「 じゃぁ差し当たり、規則正しい一日三度の食事。調練の後のシャワーと
毎日の風呂。それに、三日ごとの掃除ってのでどう?」
「 え、それは ・・・。」
はいと言って引き止めてしまいたいが守れる自信が無い。戸惑っていると、
「 全部俺が用意してやるから、また受け入れるか?」 そう言ってくれた。
「 いいんですか?直ぐに勘違いする馬鹿な奴にそんなことまで ・・・。」
「 俺がしたいんだ。良いだろう?俺の出す条件なんだから。」
「 それなら ・・・。」
天蓬が恥ずかしそうに小声でそう言うと、捲簾は腕を取って引き寄せようと
した。
「 痛っ!」
「 え?」
「 点滴用の針を抜かれていません。途中だったので。」
「 そうだったのか。それで眼鏡も掛けずに追い掛けて来たという訳か。
戻ろうぜ。続きを受けないことには。・・・ 送って行こう。」
「 でも、あの部屋は誰にも知られていないことになっています。」
「 ああ、俺の侵入はとっくにばれてる。」
そう言いながら、捲簾は天蓬を支えるようにして歩き始めた。
兵営の前庭から営倉に抜けると、本来夜になって行く場所ではないため
外灯さえ乏しくなるが、この時も月が明るく、然したる不自由は無かった。
季節は同じだから、寒月から放たれる光は澄んだ空気を抜けて相変わらず
冴えた冷たい色を帯びている。
何となく天蓬と同じ色彩を持つ光だと、捲簾は思う。
冴えて冷たく、時にいきり立って突き刺すような気さえする。
それでも、疎まずに本体を覗き込めば、意外に暖か味のある色が見えて
来る。そこが良く似ているから、月明かりの下に立つとこんなにも良く似合
って見えるのだろう。
そして、今は ・・・ 刺すような気配を消して、暖か味のある色を湛えて笑って
いるというところか。
歩きながら、ずっと自分を観察するような視線を感じて、天蓬が問い掛ける
ように捲簾を見た。
まさか月と見比べていたなどと面映ゆいことも言えず、捲簾は誤魔化した。
「 本当に敖潤は何処までも人が好くて、お前の仕合わせが第一な奴だ。」
天蓬はくすりと笑い声を立てた。
― 言っている貴方も大差有りませんよ?それに今回は、二人とも閣下に
手酷く懲らしめられたようですし。―
心の中でそう呟いていた。






















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   ―― 寒 月 ――

   2007/10/24
   天蓬心理分析 ( 独自解釈 ) 実験中
   written by Nachan

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   ブログへのリンク
   http://akira1.blog.shinobi.jp/

   素材提供:Heaven's Garden
   http://heaven.vis.ne.jp/










NOTE :

敖潤が無制限に天蓬を許し続けるという、景気の良い(?)
お話です。

だって、あのジープの前世なんですよ?
そりゃもう、愛情は無限大でしょう!

人様に読んで貰おうと思ったら、セックスシーンを入れるとか
ウェブリングに登録するとかしなくちゃいけないのでしょうが、
その気ナッシングなもんで。( つか、その腕前も無い。)
相変わらず情緒面の描けない、棒読み調の実用文描写で、
何処からどう見ても、自分だけの独り遊びですね ^^

通常庇われている筈の年代から、そういう人が居らず、
以降も人と関わらずに来たもので、べたべたに甘えん坊な
人物を描くのが好きなんです。所詮暇潰しですけど。(^_^;)